基本シラバス
--九州大学理学部物理学科 2006実施新カリキュラム--

2006/2/22 教育課程委員会
2006/3/22 運営会議 承認
2011/9/1 運営会議 改訂版承認


この基本シラバスに挙げられている内容は、専攻教育科目の間の関連から、 それぞれの科目で最低限講義すべき事項で、 担当教員が実際に講義する際には必ず含めるべきものである。

注)全学教育科目の扱い: 「コアセミナー」、「力学基礎・同演習」、「電磁気学」、「現代物理学入門」 については、全学教育の基本シラバスを物理学科で検討し、物理学科の学生に 対しての教育という観点から、基本シラバスの範囲内で望ましい内容を選択し たものを以下に載せている。

これらの科目を物理学科の学生に対し物理学科の 教員が担当する場合には、専攻科目の基本シラバスと同様に位置付けて、これ に従うことを申し合わせる。

  1. 〔力学・連続体力学〕
  2. 〔量子力学〕
  3. 〔電磁気学・相対論〕
  4. 〔熱力学・統計力学〕
  5. 〔物性・固体物理〕
  6. 〔素粒子・核物理学〕
  7. 〔物理数学・計算物理〕
  8. 〔実験学、物理学実験〕
  9. 〔最前線・演習・ゼミ・特研〕
  10. 〔各種物理〕
  11. [参考資料] 全学教育科目の基本シラバス

〔力学・連続体力学〕

力学基礎・同演習 (1年前期、全学教育科目、必修、 (末尾資料参照)

高校の物理から、大学の物理への橋渡しとして、ベクトル、微積分を用いた記 述に馴れさせる。
  1. 位置ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトルと運動方程式
  2. 簡単な運動方程式 (放物運動、空気抵抗、調和振動、減衰振動、共鳴など)
  3. 一次元系でのエネルギー保存則とポテンシャルエネルギー
  4. 外積と角運動量、力のモーメント、中心力と角運動量の保存
  5. 平面運動の極座標による記述

力学 (1年後期)

「力学基礎同演習」に接続し、Newton 力学の基礎的な概念と、典型的な問題 について理解させることを目標とする。
  1. 仕事と保存力
  2. 質点系の運動 (全運動量保存則、全角運動量保存則など)
  3. ガリレイ変換と加速度系、コリオリ力
  4. Kepler 問題
  5. 剛体の平面運動

解析力学・同演習 (2年前期、必修)

解析力学の基本的な内容について、演習とともに講義する。
  1. Lagrange 形式の力学と変分原理
  2. 剛体の運動・慣性モーメントテンソル
  3. Hamilton 形式の力学と正準変換

連続体力学 I (2年後期)

  1. 固体の変形
  2. 弾性体の波動方程式
  3. 膜の固有振動等

連続体力学 II (3年前期)

  1. 流体力学の基礎方程式とその性質
  2. ポテンシャル流
  3. 水面の波、音波
  4. 粘性流体の力学
  5. 流れの乱れと平均流
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〔量子力学〕

現代物理学入門 (1年後期、全学教育科目 (末尾資料参照)

特殊相対性理論と量子論を学ぶバックグラウンドを提供する。
  1. 光の速さと Lorentz 変換
  2. 同時刻、時計の遅れ、Lorentz 収縮
  3. 相対論的力学 (運動量とエネルギー)
  4. 波動性と粒子性 (光電効果、Compton散乱)、光量子論、de Broglie 波
  5. スペクトル線と原子の構造
  6. 黒体輻射

量子力学・同演習 I (2年後期、必修)

非相対論的量子力学の最も基礎的な内容について説明する。
  1. Schrödinger 方程式
  2. 1次元の系 (束縛状態と透過・反射)
  3. 物理演算子の固有値と固有関数
  4. 3次元中心力ポテンシャル (水素原子、球面調和関数)

量子力学 II (3年前期)

量子力学の形式的な体系と摂動論について説明する。
  1. 演算子と状態
  2. 状態ベクトルの表示
  3. シュレディンガー描像とハイゼンベルグ描像
  4. 角運動量の表現と合成、スピン
  5. 調和振動子と昇降演算子
  6. 摂動論と散乱理論

原子分子の量子力学 (3年後期)

非相対論的量子力学の原子分子への応用を中心に説明する。
  1. 水素型原子の準位と軌道
  2. スピンと同種粒子、Pauli の排他律 (波動関数の反対称性) 一般の原子の電子構造
  3. 変分法と Hartree-Fock 近似
  4. Born-Oppenheimer 近似、水素分子
  5. 分子軌道法

量子力学 III (4年前期)

相対論的量子力学と場の量子論の初歩を説明する。
  1. Schrödinger 場の理論
  2. スピンと統計性 (場の演算子による表現)
  3. Dirac 方程式
  4. Klein-Gordon 場
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〔電磁気学・相対論〕

電磁気学 (1年後期・全学教育科目、必修、 (末尾資料参照)

電磁気の基本法則を積分形式を中心に理解する。

電磁気学I・同演習 (2年後期、必修)

微分形式により、電磁気学を系統的に学ぶ。
  1. Coulombの法則、Gaussの法則
  2. Poisson方程式、Laplace方程式の境界値問題、鏡像法
  3. Biot-Savartの法則
  4. Ampereの法則
  5. Faradayの法則と変位電流
  6. Maxwellの方程式

電磁気学II (3年前期)

  1. Maxwellの方程式と電磁ポテンシャル
  2. 真空中の電磁波
  3. 物質中の電場・磁場
  4. 電磁波の反射と屈折、偏光
  5. 電磁波の放射

特殊相対性理論・電気力学 (3年後期)

  1. Lorentz変換
  2. 相対論的力学
  3. Maxwell理論の相対論的書き換え
  4. Green関数の方法
  5. 荷電粒子と電磁場の相互作用
  6. (電磁場の)Lagrange形式

一般相対性理論 (4年前期)

  1. 一般相対性原理と等価原理
  2. (擬)Riemann幾何と時空の歪み
  3. Einstein方程式
  4. 一般相対性理論の実験的検証と重力波
  5. Schwarzschild解とブラックホール

宇宙物理学 (4年後期)

  1. 宇宙の階層構造
  2. 星の進化と超新星爆発
  3. ビッグバンと膨張宇宙
  4. 元素合成
  5. 銀河形成
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〔熱力学・統計力学〕

熱力学 (1年後期)

  1. 熱・温度・エントロピー
  2. 平衡の条件
  3. 熱力学過程と熱機関
  4. ルジャンドル変換と自由エネルギー
  5. マクスウェル関係式とその応用
  6. 相転移の熱力学

統計力学 I・同演習 (2年後期、必修)

  1. 熱力学の統計的基礎
  2. アンサンブル理論と応用 (ミクロカノニカルアンサンブル)
  3. カノニカルアンサンブルとその応用
  4. グランドカノニカルアンサンブル、T-P アンサンブル
  5. ボーズ分布とフェルミ分布
  6. 密度演算子

統計力学II (3年前期)

  1. 気体の統計力学
  2. 理想ボーズ気体
  3. 理想フェルミ気体
  4. 相転移の基礎 (分子場近似理論、ランダウ理論など)

相転移の統計力学 (4年後期)

  1. 相転移の理論 (厳密解、分子場近似、ベーテ近似)
  2. スケーリング理論
  3. 繰込み群の方法
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〔物性・固体物理〕

物性物理学 I (3年前期)

  1. 結晶格子、格子面
  2. 逆格子とX線回折
  3. 結晶構造の分類、イオン結晶、準結晶
  4. 格子振動とフォノン
  5. 格子比熱

物性物理学 II (3年後期)

  1. 金属の自由電子論 (古典論、量子論)
  2. フェルミ気体 (電子比熱、電気伝導、Hall効果)
  3. 結晶中の電子 (ブロッホの定理)      
  4. バンド理論、フェルミ面
  5. 金属、半導体、絶縁体
  6. エネルギーバンドの求め方

物性物理学 III (4年前期)

  1. 半古典論に基づく輸送現象
  2. 半導体 (n型、p型)、ホール伝導
  3. 固体の磁気現象 (磁性、磁気抵抗、ホール効果、ドハースファンアルフェン効果など)
  4. 光学特性 (励起子、バンド間光学遷移)
  5. 誘電体、超伝導 (時間がなければ省略しても良い)
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〔素粒子・核物理学〕

原子核物理学 (3年後期)

  1. 原子核の大きさ (ラザフォード散乱、ボルン近似)
  2. スピン、パリティおよび統計
  3. 核力 (重陽子、中間子論)
  4. 原子核の安定性と崩壊
  5. 原子核の構造 (フェルミガス模型、殻模型、集団運動模型)

素粒子物理学 (4年後期)

標準理論について学ぶ。
  1. 基本構成子と力
  2. 素粒子反応の基礎
  3. ゲージ理論

原子核・高エネルギー実験学 (4年後期)

  1. 放射線検出の原理
  2. 電磁場による粒子の分析と制御
  3. 加速器の原理
  4. 高エネルギー実験と標準理論
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〔物理数学・計算物理〕

物理学入門 (1年前期)

大学初年級の物理学で用いる数学的手法を、具体的物理の問題に即して学ぶ。
  1. 2階線形常微分方程式 (抵抗のある重力場中の質点の運動)
  2. テイラー展開、オイラーの関係 (振り子の運動)
  3. 固有値、固有ベクトル (連成振動)
  4. 偏微分 (力とポテンシャル、勾配、定積比熱と定圧比熱)
  5. 重積分 (慣性モーメント、固定軸周りの運動)
  6. ベクトル解析 (コリオリ力、角運動量、流れと発散・回転)
  7. 変分原理(フェルマーの原理とオイラー方程式)

物理数学 I (2年前期)

  1. 線形代数の復習、ベクトル解析
  2. 関数空間 (ヒルベルト空間)
  3. 常微分方程式の解法
  4. 偏微分方程式の解法

物理数学 II (2年後期)

  1. 複素関数論
  2. 積分変換 (フーリエ変換、ラプラス変換)と微分方程式

物理数学演習 (2年後期)

物理数学 I、II の内容について演習を行なう.

数値計算法 (3年後期)

  1. プログラミング言語 (FortranまたはCなど)の解説と計算機の使い方
  2. 数値計算とエラー
  3. 数値微分と数値積分、常微分方程式の数値解法
  4. 計算物理入門: 具体的な物理系に対して、シミュレーションをしてみる。
  5. その他の話題 (以下の中からいくつか)
    • 線形計算 (固有値、固有関数)
    • 偏微分方程式
    • データフィティング、最小二乗法
    • 擬似乱数
    • フーリエ変換
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〔実験学、物理学実験〕

基礎物理実験学・同実験 (2年後期)

  1. 物理実験を行う際に必要と思われる知識、技術の基本的事項を講義する。
    1. 基礎物理学実験時の安全
    2. 誤差論
    3. 学生実験の基礎技術 (半導体、電子回路、真空技術、レーザー、光・X線計測 等)
  2. 基礎物理学実験を行う。

物理学総合実験 (3年前期・後期、必修)

物理学実験、化学物理学実験、生物物理学実験、地球物理学実験を行う。

物理実験学 (3年前期)

(必要に応じて複数担当)
  1. 物理学総合実験時の安全
  2. 電磁気学の応用の基礎事項
    1. 交流回路
    2. マイクロ波、光の応用 等
  3. 標準的な実験技術の基礎事項 (メスバウアー、NMR 、ESR、 粒子線計測技術、 宇宙放射線測定技術 など)
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〔最前線・演習・ゼミ・特研〕

コアセミナー (1年前期、全学教育科目、必修、 (末尾資料参照)

(未定:コアセミナー検討ワーキンググループで検討中)

物理学特別講義 A (物理学最前線) (1年前期)

これから学ぶ物理学の全体像をつかみ視野を広げてもらう為に、 新入生にも分かる平易な言葉で、 物理学のカバーしている領域の最前線を様々な角度から紹介する。

物理学基礎演習 (1年後期)

力学および電磁気学基礎 (全学教育科目)の演習を行なう。

物理学特別講義 I (最先端物理学) (3年前期)

現在ホットに行なわれている研究に触れる機会を与え、特別研究での専門分野を 選択するのに役立つ情報を提供する為に、各教員がそれぞれ専門の立場から最先 端の物理学を紹介する。

物理学ゼミナール (3年後期)

様々なトピックスについて少人数の輪講を行ない、 論理と数式を的確に理解し 人前で説明すること、適切な質問をすること等のトレーニングを行なう。

少なくとも期間の半分は英語の文献を講読し、専門英語を読む訓練を 行なう。

物理学総合演習 (4年前期)

力学、電磁気学、量子力学、統計力学などの基礎科目を中心に、 物理学の総合的な演習を行なう。 大学院入試対策ではない。

物理学特別研究 I、II (4年前期・後期、必修)

輪講または実際のテーマについての研究によって、研究の進め方を学ぶ。
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〔各種物理〕

電磁流体力学 (4年後期)

電磁流体力学(プラズマ物理学)の基礎を学ぶ。

物理学特別講義 C (生物物理学) (隔年、3後期〜4年)

3年生までの物理学を基礎に、生物物理学の基礎と各論を物理学的視点から講義 する。
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[参考資料:全学教育科目の基本シラバス]

注意:必ずしも全ての項目が講義されているわけではない。

コアセミナー (1年前期)

(1) セミナーでの発表と討論、 (2) レポート・論説文の書き方、 (3) 英語文献の読み方と科学英語、 (4) 科学の方法や社会における科学の役割・科学と価値、などの 学習や演習を通して、 大学での物理学の勉強や研究の仕方を学ぶ。

力学基礎・同演習 (1年前期)

運動の記述、運動方程式を解くこと、エネルギー・運動量・角運動量の保存則な どの物理的概念を身につけさせることを目標に、質点、質点系、及び剛体に関す る力学の基本的事項を学ぶ。
  1. ニュートンの運動方程式とその解法、色々な力が働く場合についての運動
  2. 保存力、保存力場、力学的エネルギー
  3. 運動量、運動量保存則等
  4. 運動の相対性、慣性系、非慣性系
  5. 万有引力
  6. 2質点、質点系、重心運動
  7. 角運動量、角運動量保存則
  8. 剛体のつりあい

電磁気学 (1年後期または2年前期)

  1. 静電界、クーロンの法則、ガウスの法則、静電場のエネルギー
  2. 誘電体、誘電分極
  3. 定常電流、オームの法則
  4. 磁石と磁性体、磁気分極、磁気モーメント
  5. 電流と磁場、ビオ・サバールの法則、アンペールの法則
  6. 電磁誘導とマックスウェルの方程式
  7. 準定常電流と交流回路
  8. 電磁波

現代物理学入門(1年後期)

19世紀の終りから20世紀にかけ、それまでのニュートン力学とマクスウェルの電 磁気学、即ち古典物理学では理解できない現象が次々に発見され、物理学の新し い概念が生まれた。この科目では以下をを学び、その概念の理解を目的とする。
  1. 特殊相対性理論:ローレンツ変換、時間と空間、質量とエネルギー
  2. 量子力学:量子仮説、波動性・粒子性、シュレディンガー方程式
  3. 統計力学:統計集団と基本仮定、マクスウェル-ボルツマン分布、 電子とフェルミ統計、エントロピー、自由エネルギー

熱と波動論基礎 (2年前期)

演習を交えながら、前半で熱現象、後半で振動・波動現象を学ぶ。
  1. 温度、熱力学第0法則、絶対温度
  2. 熱と熱力学第1法則、熱容量、比熱
  3. 熱力学第2法則とエントロピー、可逆過程、不可逆過程
  4. 気体分子運動論
  5. 単振動、減衰振動、強制振動、連成振動
  6. 波動方程式
  7. 波の干渉、回折、回折格子、平面波、球面波
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