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在校生、卒業生の声

森川億人 さん(2020年度 博士課程修了)

「大学資源を活用し、学問を窮めよう」

私は九州大学で博士号を取得し、その後JSPS特別研究員として大阪大学で研究活動を行っています。専門は素粒子理論という、物質を構成する究極の最小単位「素粒子」を理論的に探求する学問です。これは自然現象を統一的原理に基づいて解き明かすという理論物理学の「構成的方法論」の中核でもあります。実際、古くは物性理論でも業績をあげてきた著名な「素粒子論屋」たちにつづき、クォークやヒッグス粒子の予言・観測に至るなど様々な成果を出しました。近年でも、新たな概念や一般化、その数学的構造において物性理論と素粒子論は密接な関わりがあります。どんな分野も問わず学ぶことができ、そこから生まれる数理的な創造性を皆さんも楽しんで欲しいと思っています。(私の博士総代答辞を参考。https://sites.google.com/view/o-morikawa/cv/valedictory)

さて、大学の特徴として重要なのはその「資源」でしょう。教員や先輩・後輩などの人財、実験設備や大学図書館の規模、事務的・経済的支援など多くの要素があります。ウェブサイトで見られるカリキュラムや研究室の特色だけではわからなかった部分がほとんどだと思います。実際、高校までのように「授業」を受けているだけでは、大学の「講義・研究指導」の恩恵を十全に受けることはできません。上記のような研究資源を軽視すればどんな大学も大して特徴・価値のないものとなります。どう活かすかは人それぞれで、その数だけ九州大学の価値が生まれるでしょう。

私の場合、学部時代は(箱崎キャンパスの)図書館に入り浸っていたものです。例えば、原田先生の解析力学を受講してからは山内恭彦・ランダウ・深谷賢治・アーノルドらの本を独学したり、また友人とプログラミングのゼミを行ったりしました。学部3年のときには当時の素粒子論研究室にたびたび突撃(質問)して困らせた記憶があります。自分の知識欲を刺激し満たすためにも大学という環境をどんどん活用していくことが大事です。人・設備・データなどへのアクセスしやすさも「資源」であり、私自身コミュニケーションが得意ではないのですが議論に果敢に挑むことで見えてくるものも多いでしょう。「何時一樽酒重與細論文」。

別府航早 さん(2023年度 博士課程修了)

「Curiosity driven」

鳥や魚など自ら動く物質を総称してアクティブマターと呼び、それらの群れ運動の背後の数理構造を物理学で捉える研究が世界で活発に行われています。群れと聞くと生物学の範疇に思われるかもしれませんが、実は群れ運動を説明するには、統計力学、流体力学から量子力学まで幅広い物理学の知識がしばしば必要になります。この群れる生命を貫く普遍的な物理法則の解明という究極的な問いに答えを出すべく、私は九州大学で学部4年から修士課程、博士課程の計6年間アクティブマターの研究に取り組んできました。そして現在も、フィンランドのアールト大学で博士研究員としてこの研究分野で研究をしています。

私がこうして日々充実感を得ながら研究活動を継続できている大きな要因の一つは「好奇心」です。もちろん困難に直面することも多々ありますが、アクティブマターの分野はまだまだ未解決課題が多く、飽くなき探求心が私を衝き動かしています。九州大学で勉学に励む皆さんにも、そういった自分の中から湧き上がる気持ちを大事にしていただきたいと思っています。最近では、ChatGPTのようなAIツールの急速な普及で、学ぶこと自体の意義が随所で問われていますが、ぜひ、curiosity-drivenな学びや研究で未来を切り開いていきましょう。